本記事では、AI時代に消えてしまうエンジニアの特徴をまとめます。まずは、AIによって仕事が奪われやすい業種について触れていきます。
本記事では技術力や職務遂行能力、スキルについて第一回の記事を前提に構成されています。それぞれの差が明確にわからない方は第一回の記事をご覧ください。また、職務遂行能力の具体的な内容や職種によって求められる能力が違う事、発達段階があるという話は第二回の記事に掲載されています。
01.AIに仕事が奪われた業種とは?
最近のChat GPTの進化で一番インパクトがあったのは、個人的にはDeep Researchでした。私は調査の際にリサーチ会社にお金を払って資料を作ってもらっていたのですが、Deep Researchが出てからは自分で調べるようになりました。どうしてインパクトがあったかというと、単純にコンサルタントに払う分の支出が減ったからです。
コンサルタントといえばIT系でもダントツに複雑性が求められる業種のはずですが、しかし現実にはAIの進化によって調査にコンサルタントが不要になり、Deep Researchで十分な情報が得られるようになったと感じます。
これがもしホームページの修正だったらどうでしょうか?簡単なコーディングであれば、Chat GPTはすぐに回答してくれます。今まで外部の開発会社に頼んでいたHTMLのコーディングも、AIを使えば簡単に終わるようになっているはずです。
AIによる置き換わりの恐ろしさは、置き換わったことが認識できない点にあります。発注が来なかった、という事実を知ることはできません。
Deep Researchによって向上したこととは、AIによる情報収集の精度が上がったことです。弊社の職務遂行能力には「情報探求」というものがあります。情報探求とは、情報を深く収集し、それを分析し、それを活用するというプロセスです。
情報探求の各レベルにおいて、Deep Research以前のChat GPTとDeep Researchがどこまで情報探求の職務遂行能力を備えていたかを見てみましょう。
レベル | 行動の特徴 | Deep Research以前 | Deep Research以降 |
---|---|---|---|
1 | 二次情報を利用して基本的な疑問を解消する。 | ✅️該当する。学習データという二次情報を利用して疑問を解消する。 | ✅️該当する。検索データという二次情報を利用するが深堀りする。 |
2 | 自発的に関連する情報を幅広く集める。 | ❌️該当しない。学習データから答えを出す。 | ✅️該当する。検索データから答えを出す。 |
3 | 自発的に一次情報に積極的にアクセスし、情報の矛盾や不足を発見して解消を試みる。 | ❌️該当しない。そもそも一次情報にアクセスしない | ✅️該当する。検索対象を一次情報に絞ることで実現できる。 |
4 | 自発的に一次情報と二次情報を組み合わせ、新たな知見を導き出すために最新の研究情報や業界データを取り入れる | ❌️該当しない。そもそも一次情報にアクセスしない | ✅️該当する。プロンプトに最新データがいつからかと、一次情報から考察し二次情報を作って新たな知見を生むように命令すれば実現できる。 |
5 | 実証実験やデータ分析を通じて、確度の高い情報を得ることを重視する。 | ❌️該当しない。学習データから答えを出す。 | ❌️該当しない。自身で何かを試して結果を報告するわけではなく、あくまで検索データから答えを出す。 |
Deep Researchの実現によって「情報探求」という職務遂行能力をレベル4くらいまでがカバーされています。これはAIによる情報探求(情報収集)の精度が上がり「AIが人間に置き換わっている」状況を示しています。
02.AIに置き換わる業種の特徴
コンサルタントの仕事は、実はほとんど置き換わっていません。むしろ、AIによって業務効率が良くなったと言えるでしょう。調査をしたあと、考えをまとめたり次の指針を決めるのは人間の仕事です。なので、単純に調査だけを行うコンサルタントは置き換わってしまうでしょうが、その後の経営指針や提案をする部分は人間が行います。
情報収集だけ見ると「職務遂行能力が低い人間が、AIに仕事を奪われる危険性が高い」ように見えましたが、そうではなくて「職務遂行能力があまり必要ではない作業が、AIに置き換わりやすい」と言えます。
他の職務遂行能力はどれくらいAIによって置き換わってしまったのか?について考えていきます。
弊社が大事だと考えている職務遂行能力は「情報探求」「主体性」「習得の積極性」「関係構築」「チームワーク」「組織貢献力」「達成への意欲と行動力」「主題意識」「対人理解力」「サービス精神」「組織感覚」「育成重視」「リーダーシップ」「分析力」「自制心」です。
この中でAIによって置き換わりそうな職務遂行能力は、実は「情報探求」と「分析力」くらいしかありません。人間の職務遂行能力はまだまだAIにとって変わられないような領域が多いことがわかります。
共通して言えるのは「主体性」を筆頭に「能動性が求められ、AIに入力情報が多い」という職務遂行はAIには難しいといえます。逆に、AIに置き換わりやすいものの特徴は「受動的であり、入力情報が少ない」であると言えます。
例えば簡単なセラピーを行うような「対人理解力」を備えたAIがあるとします。情報入力をテキストや音声だけに限定すると、低い職務遂行能力までの品質であればAIに置き換わる可能性が高いと言えます。これは「セラピー」の性質上、受動的に話を聞くことが多いことと、情報入力をテキストや音声に限定することで、AIが置き換えることができるからです。
コールセンターの交換台のような、要件を聞いて必要な部署に電話を回すだけの仕事も、AIに置き換わりやすいでしょう。問い合わせについても、ある程度の受け答えであれば今後はAIでできるようになっていくため、消えていく職業であると言えるでしょう。
また、他との連携が必要な業種に対してはAIに置き換わりにくいと言えます。例えばプロジェクトマネージャーなどは、営業や開発、マーケティングなどの他部署とやり取りが必要=人間同士のコミュニケーションが必須なので、AIに置き換わりにくいといえます。
AIによって消えてしまう職業の特徴は、「受動的であり、入力情報が少なく、他部署と関係が独立している」業種であると言えるでしょう。
03.AI時代に消えてしまうエンジニアの特徴
これからAIが進化していくと、受動的でオペレーティブな(活用する知識の範囲が狭い)エンジニアは消えていくでしょう。また、AIの進化によりスキル面の需要は相対的に低くなり、高い職務遂行能力の人材が求められるようになります。
弊社が求めている職務遂行能力の一覧から、低い職務遂行能力の人物像をまとめてみました。下記のような特徴に心当たりがある方は、職務遂行能力が低い一面があります。
職務遂行能力 | 特徴 |
---|---|
情報探求 | 表面的な情報だけで判断を行う、一次情報を探せないエンジニア |
主体性 | 先の課題を意識できない、目の前の課題に手一杯なエンジニア |
習得の積極性 | 新しい技術を自発的に習得しようとしないエンジニア |
関係構築 | 誘われたら飲み会に行く程度で、自分からは関係構築の機会を用意できないエンジニア |
チームワーク | チームメンバーに対する信頼や期待を言動で表せないエンジニア |
組織貢献力 | 組織の目標に強い忠誠心を示せず、締切や目標達成に励めないエンジニア |
達成への意欲と行動力 | 仕事の基準を持たない、ポリシーのないエンジニア |
主題意識 | 今何をすべきかが分かっていない、すぐに話しが逸れてミーティングの時間が有効に使えないエンジニア |
対人理解力 | 他者の気持ちを汲み取り、それを業務改善に反映できないエンジニア |
サービス精神 | 顧客に対する意識が低く、顧客とうまくコミュニケーションが取れないエンジニア |
組織感覚 | 誰がキーパーソンか?などの組織感覚に疎く、社内政治に気付けないエンジニア |
育成重視 | 上下関係に関わらず、他者への育成に関心がないエンジニア |
リーダーシップ | 意思決定の理由を共有しないなど、チームに基準を共有できないチームリーダー |
分析力 | 問題の原因や結果を予測し、タスクの優先度付けや効率的な処理ができないエンジニア |
自制心 | ストレスコントロールができず、他者に対して悪影響を与えるエンジニア |
04.まとめ
AIに置き換わりやすい業種の特徴から、逆に置き換わりにくい業種の特徴が導き出せそうです。
「能動的であり、入力情報が多く、他部署との連携が必要である」業種はAIに置き換わりにくいと言えるでしょう。
つまり、エンジニアとしても「能動的であり、いろいろな知識(専門知識だけではなく、サービス利用者の事情や他部署の都合など)を活用し、他部署との連携を取りながら業務を進める」事ができれば、それはAI時代に生き残るエンジニアだと言えます。ただし、上述したような低い職務遂行能力しか持たないエンジニアは、他の人材との競争に負けてしまうため注意が必要です。
次回は、職務遂行能力を高めるための方法について紹介していきます。
次の記事: 自らの能力をハック!?自身をエンジニアリングして成長させる「技術」とは
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